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星陵日記

コロナ禍での安全な歯科医療
~「クラスB」滅菌システム~

皆さま、こんにちは。
歯科衛生士の柏井伸子と申します。
私はインプラント治療を中心に、お口の中と外の感染管理をテーマに研究しています。
お口の中の感染管理では、インプラント周囲炎という、インプラントを支えている骨や歯ぐきへの感染による炎症の原因やその予防方法がテーマとしています。

また、お口の外の感染管理では、環境設定や使用後の器具器材の適切な滅菌について追求しております。
今回は、歯科治療で使用する器材を、いかに安全な状態で準備するかという点について皆さまへお伝えします。

昨年12月に中国・武漢で発生した呼吸器系感染症であるCOVID-19(CORONA Virus Infected Disease)の原因は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)という微生物の仲間のなかでも最も小さなウイルスの1つであることはご存知の通りです。

テレビドラマの中で、「DNA鑑定」という言葉を耳にされることがあるかと思います。DNA(deoxyribonucleic acid)はデオキシリボ核酸という遺伝情報がつまった物質です。
ウイルスも分裂・増殖するため遺伝情報が必要ですが、その遺伝情報を格納している物質は、DNA以外にもRNA(ribonucleic acid)リボ核酸があり、今回の新型コロナウイルスはこのRNAの外側に「カプシド」というタンパク質の層の外側を「エンベロープ」という脂質の膜が取り巻いています。
厄介なことに、エンベロープには「スパイク」と呼ばれる蛋白質でできた棘のようなものが飛び出しており、この棘が私たちの粘膜に引っかかり細胞に侵入します。
医療現場ではウイルスだけでなく、食中毒を引き起こす大腸菌や傷口を化膿させる緑膿菌などの細菌類にも対応しなければなりません。

では、どうすればこれらの病原性を有する微生物たちから私たちの身体を守ることができるのでしょうか?
最近では日常的に「消毒」という言葉を使うようになりました。
アルコールを手に擦り込むことで消毒ができるのは、アルコールには蛋白質を凝固・変性させる効果があり、微生物の活性を失わせて分裂・増殖できなくすることが可能となるからです。
しかし残念ながら「消毒」では、私たちに害を及ぼす微生物「にのみ」有効で、全ての微生物を殺滅するためには「滅菌」をしなければなりません。

つまり、「消毒」よりも「滅菌」のほうがレベルの高い処理であり、患者さんたちの安全性確保のためには、より高いレベルでの対応が求められます。

歯科医院における滅菌では、蒸気を活用した高圧蒸気滅菌法の原理に基づく滅菌器を用いています。
ひとくくりで滅菌器といっても、欧州の基準では”B”・”N”・”S”と、性能によりレベルが分かれており、それぞれ対象となるものが違います。

その中でもクラスB(Big Sterilization)と呼ばれる滅菌器は、大学病院等で用いられる大型滅菌器と同じ機能を搭載した卓上の滅菌器を示し、滅菌器の中の空気を外に追い出し、真空状態を作り出して蒸気を浸透させます。
A・B・Cというランク付けがあるのではありません。
クラスB滅菌器では、内部を134℃で2気圧という日常生活の環境とはかけ離れた状態にし、微生物のカラダを構成している蛋白質を熱で固め、分裂・増殖する能力を失わせる「不活性化」を行います。
ゆで卵や目玉焼きを作る時は、卵に熱を加えることにより卵を構成している蛋白質が熱変性するわけですが、滅菌器の中でも同じことを短時間で確実に実行するようにプログラムされています。

当院ではこのクラスB滅菌器を採用しており、外側はもちろん、内側の隅々までも安全なレベルに滅菌した医療用具を使用して治療させていただいております。
これからも質の高い滅菌により作り出される安全な歯科治療のために、スタッフが一丸となって対応を続けてまいります。

歯科衛生士
柏井伸子

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口腔領域に発生する「血管腫」

皆さまいかがお過ごしですか。
新型コロナウイルス感染拡大予防のための休業、自粛要請が解除され、普通の生活に戻りつつある昨今ではありますが、まだまだ不安を感じながら生活されている方も多いのではないでしょうか。
6月15日から21日まで東京メトロ表参道駅のコンコースで、新型コロナウイルス感染症の治療にかかわる医療関係者への感謝を示すポートレート写真展が開催されました。
特定感染症指定医療機関として新型コロナウイルス感染症の治療に当たっている国立国際医療研究センター病院に勤める医師や看護師ら21人を写真家・宮本直孝さんが撮影したもので、治療の最前線に立つスタッフたちの緊張感、緊迫感が伝わり、私ども歯科医師も医療従事者として、通常通り使用する器材の滅菌消毒の徹底に加え、コロナ感染予防対策リストを作成厳守し、患者様、スタッフの安全に留意しつつ、微力ながらも皆さまの健康維持向上のために貢献させていただきたい…と改めて思いました。

ところで、今回は口腔領域に発生する「血管腫」について、少しお話しさせていただこうと思います。
「血管腫」は、血管組織由来の良性腫瘍であると教えられてきましたが、最近の研究では「腫瘍」と言えるものはその一部にしか過ぎず、ほとんどは発育異常であり、「血管奇形」という認識に変わってきています。

口腔領域での好発部位は舌、口唇、頬部などの軟組織ですが、顎骨内に発生することもあります。

大きさはさまざまで、表面の多くは暗赤紫色を伴い、やや隆起していることが多いのですが、腫瘤が深部にある場合は表層の色調に変化がみられないこともあります。
腫瘤は軟らかく、MRI、エコーなどの検査により診断します。
手指などで圧迫すると表面の色が退色し、また腫脹も消退しますが、圧をはなすと元の状態に戻る(被圧退縮)のが特徴といわれてきましたが、実際はこのようなものは多くはありません。

学生時代に習ったものと随分変わっており、医学が日進月歩のものであると実感します。
腫瘤が小さい場合、部位によっては経過観察となることもありますが、血管腫は徐々に大きくなることが多く、また誤って噛むことにより出血をきたす危険性があるため、積極的な治療をおこなうことも少なくありません。
治療法としては血管が集まった腫瘤へのアプローチですから、治療時の出血を最小限に止めなければなりません。

塞栓療法、凍結療法、硬化療法や摘出手術などが従来からおこなわれている治療法ですが、これらの処置は通常入院が必要であることに加え、再発、瘢痕による機能障害(口が開きにくくなる等)・審美障害(傷跡等)などの後遺症が課題となっていました。
しかし最近では、医療用レーザーの使用により最小限の外科的侵襲で治療出来るようになったため、外来での治療や、後遺症を最小限に抑えることが可能になりました。

【レーザー照射による治療例】

(上記症例写真は丸岡豊先生のご厚意により掲載させていただいております。)

この口腔領域の血管腫のレーザー治療は2018年に国立国際医療研究センター病院歯科・口腔外科 診療科長 丸岡 豊先生(現 同センター副病院長)らのご尽力により、保険治療に収載されたため、費用面でも治療が受けやすくなりました。
血管腫(血管奇形)治療の詳細についてはこちらの記事をご参照ください
血管腫(血管奇形)治療の詳細)。

新型コロナウイルスの研究・治療で一躍注目を集めた国立国際医療研究センター病院ですが、丸岡先生を始めとする多くの優秀な医療スタッフを擁し、国立高度専門医療研究センターの1つとして、全科通じ診療と研究を統合した高度医療を提供している素晴らしい総合病院でもあるのです。

当診療所は国立国際医療研究センター病院の他にも近隣大学病院や総合病院との病診連携をとり、万全の体制で患者様の診療に臨んでおりますので、口腔領域のお悩みがある方は、いつでも安心してご相談ください。
お口を通して皆様の健康管理に寄与出来ましたら幸いです。

本記事の作成に関しましては、国立国際医療研究センター病院 歯科・口腔外科診療科長の丸岡 豊先生、並びに株式会社メディカルノート様に多大なるご協力をいただきました。記して御礼申し上げます。

歯科医師 竹屋江美

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第三の歯とよばれるインプラント治療

皆さま、こんにちは。新型コロナウイルスの予防に引き続き、こまめに水分補給を心掛けて熱中症にもお気をつけください。
マスクをつけていると体内に熱がこもりやすく、のどの渇きを感じづらくなり、脱水が進みやすくなりますので経口補水液などもおすすめです。
さて、皆さまは第三の歯とよばれるインプラント治療をご存じでしょうか。

近年、インプラント治療について患者様の認知や関心が高まっており多くの歯科医院でインプラント手術が行われています。
入れ歯以外の選択肢として「インプラント治療」が周知され歯科衛生士は術前から術後まで広く携わります。
患者様の健康をサポートしていく立場にある歯科衛生士は、インプラントと天然歯を長期に共存させていくために、多くの知識を学ぶ必要があります。
今回は歯科衛生士がインプラント治療にどのように携わるかについてご紹介させていただきます。

インプラント手術前に行っておく口腔内の環境整備とは?

インプラント手術が行われる日までに、患者様の口腔内の状態を整えておくことが大切です。

① プラークコントロール
② 保存不可能歯の抜歯
③ スケーリングやルートプレーニングによる炎症のコントロール
④ むし歯、感染根管および根尖病巣の処置
⑤ 揺れている歯の固定
⑥ 咬み合わせの調整

などが術前の初期治療として行われます。
術前の口腔内環境整備では、歯科医師と歯科衛生士のチームワークが求められます。
術前の口腔内環境が整ったらいよいよインプラントの埋入になりますが、術中も気をつけることがたくさんあります。

「清潔域と不潔域の理解が非常に大切!」

インプラント手術において「感染」はもっとも避けなければいけない偶発事故の一つです。
術部が感染すると、場合によっては移植骨やインプラントを撤去しなければなるので無菌的な手術が不可欠になります。
清潔域にある器具は使用終了まで清潔域にとどめ、不潔域から清潔域に器具は移動することは絶対に避ける必要があります。

歯科衛生士に求められる患者様への配慮とは?

① 適度にお声がけをして不安を取り除く
② バイタルサインの変化を見逃さない(血圧・脈拍・血中酸素飽和度の変化)
③ 器具を落とすなど、大きな音をたてるようなことをしない
④ 口腔内に変化を生じるときは必ず声をかける(注水時、術野の確保時)
⑤ 口角炎を予防する➡術中は生理食塩水で湿らせておくと口角炎の予防に◎
⑥ 我慢していることはないかの確認をする(疼痛等)

術者がより手術に集中できるよう、歯科衛生士も血圧計、パルスオキシメーターの数値を確認する習慣をもち、患者様の体調の変化を察知できるようにしなければなりません。

インプラントはメインテナンスで予後か決まる!

インプラント治療完了後、とても重要なのが、その後のメインテナンスです。
メインテナンスを怠るとインプラント周囲の歯肉や骨といった組織が炎症を起こすこともあります。
インプラント周囲粘膜炎の早期発見・治療にためにも定期的なケアが必要になります。

インプラント周囲組織と歯周組織の相違点としては

① 結合組織中のコラーゲン含有量が多く、線維芽細胞の量が少ない
② 血液配給量が少ない
③ コラーゲン繊維の走行が違う

が挙げられます。
そのためインプラント周囲組織に炎症が起こると、急速に不可逆的に進行すると考えられています。
そのためメインテナンスの際に、私たち歯科衛生士がいかにインプラント周囲粘膜の正常・異常を診られるかが重要であります。
インプラントのメインテナンスの際は全身的なリスクファクター(循環器系疾患・代謝性疾患・骨粗しょう症等)と局所的リスクファクター(コントロールされていない歯周炎・異常咬合習癖)を把握する必要があります。
喫煙がオッセオインテグレーションを(インプラント体の素材であるチタンが骨に結合すること)を阻害したり、非喫煙患者様に比べて大きなリスクになることを説明して禁煙指導をおこなう必要があります。
禁煙できない場合はリコール間隔を短くするなどの対処が必要となります。

インプラント周囲粘膜炎とインプラント周囲炎の違いって何?

インプラント周囲粘膜に限局した可逆的な炎症をインプラント周囲粘膜炎と定義します。
また、インプラントに細菌感染や過重負担がかかり炎症が深部に進行し、インプラント周囲骨の吸収を引き起こす炎症性病変がインプラント周囲炎と定義されています。

最後に・・・

私たち歯科衛生士は皆さまに安心してインプラント治療をうけていただけるよう日々研鎖を積みながら診療にあたらせていただいております。
インプラントのケア、それ以外の口腔ケアについてもお気軽にご相談いただければと思います。

歯科衛生士
永田 奈緒

参考文献
中山かおり(2010)『これでバッチリ!インプラント治療のアシスタントワーク上巻』
(クインテッセンス出版株式会社)
岩崎美和(2011)『DHが行うインプラントメインテナンスのスタンダード』
(デンタルダイアモンド社)

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L 8020 乳酸菌でむし歯、歯周病を予防する!

今年はコロナウィルスの蔓延で、我々の日常生活にも大きな影響がありましたね。
気が付けばもう一年の半分が経過しておりました。
もうすぐ夏ですよ!皆様、元気にお過ごしでしょうか?

在宅ワークが増えたことで、運動不足気味の方も多いのではないでしょうか?
緊急事態宣言の時など、私の唯一の楽しみがウォーキング、スーパーやドラッグストアへの買い出しでした。
個人的にサプリメントのコーナーは興味大でして、その中でも良く目にしたのは善玉菌、腸内環境をよくする菌...云々のフレーズでした。
そういえば、世の中なんと多くの善玉菌関連の食品やサプリメントが多いことか!大半はお通じを良くしたり、肥満解消などが目的とされているようですね。

今回は、口腔内の環境を改善する乳酸菌のお話しをしたいと思います。

口腔内には 700~800 種類の微生物が存在するとされています。
腸と同じように、菌のコロニーである「口腔内フローラ」があります。
その中には乳酸菌のような善玉菌もいれば悪玉菌もいます。

悪玉菌の代表格が、歯周病を引き起こす Porphyromonas gingivalis (ジンジバリス菌)。むし歯の原因菌 mutans streptococci (ミュータンス菌)などです。
ジンジバリスは歯と歯肉の隙間に付着した食べかす=プラーク(歯垢)を好み、プラークの中で次第にコロニーを形成していきます。
プラーク中にはミュータンス菌も存在します。

歯や歯肉の隙間に付着したこれらのプラークは、歯磨きで予防することはある程度できますが、一度歯周病にかかってしまったり、むし歯ができてしまった後では病原菌を歯ブラシだけで除去することは難しくなります。

これまで病原菌は、Antibiotics (抗生物質)で殺菌するという考え方が主流でした。
近年それに対し、Probiotics (プロバイオティクス)で悪玉菌を退治するという方法が考えられてきました。

このプロバイオティクスとは「腸内フローラのバランスを改善することによって宿主の健康に好影響を与える生きた微生物」と定義されています。
プロバイオティクスの候補としては乳酸菌やビフィズス菌、オリゴ糖類などがあげられます。
益虫と同じで、作用は穏やかながら、環境への害はほとんどなく、人体への副作用もないなどの利点があげられます。

L 8020 乳酸菌の発見!

広島大学大学院医系科学研究科 口腔生物工学研究室の二川浩樹教授により、口腔内の病原菌に対して、作用する善玉菌が発見されました。
正式名称はラクトバチルス・ラムノーザス k03 株という菌種ですが、「8020 運動」にちなんでL 8020 と名付けられました。
L 8020 は歯周病やむし歯に罹患したことのない健康な子どもの口腔内から発見されたヒト由来の乳酸菌だそうです。
むし歯菌や歯周病菌の数を抑制するという抗菌作用があります。
二川先生はこのL 8020 乳酸菌の入った試作のヨーグルトを用いて実験を行ったところ、5 種類の歯周病菌とむし歯菌、さらにはカンジダ菌にも抗菌効果があることを証明しました。
二川先生の発見したL 8020 について詳しい解説は以下のウェッブサイトをご覧ください。

https://www.l8020.jp/

L 8020 菌を使用した商品も数多く揃っているようです。
私は是非ヨーグルトを試してみたいと思います。

http://www.campusmedico.jp/l8020/products/index.html

最後に、このような善玉菌を含む食品を毎日の習慣に取り入れることによって、むし歯や歯周病を抑制できるなんてありがたいことですよね。
口腔内の環境を良くすることによって、さらには全身の健康状態も良くなるのですから取り入れてみて損はないような気がします。

特に、むし歯になりやすいあるいは歯周病が気になるという方にはお勧めの予防方法だと思います。
もちろん、毎日の丁寧な歯磨きと歯医者さんでの定期的なメインテナンスは欠かせないんですけどね。

歯科医師 大庭美和子

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口腔機能低下症とは

こんにちは、皆様いかがお過ごしでしょうか?
新型コロナウィルスの世界的なパンデミックにより、自粛生活を余儀なくされているかと思います。
そんな中でも、食べるという行為は健康を維持する上でとても大切で、楽しみの一つでもあるかと思います。

お食事をおいしく、楽しく召し上がって頂くためにも、お口の健康は必要不可欠になってくるかと思います。

さて、少し前になりますが、2020/01/29にNHKの今日のおはよう日本の7時台のニュースで「口腔機能低下症」にて特集されました。

老年歯科学会の基準によると、口腔機能低下症とは、、、加齢だけでなく、疾患や障害など様々な要因に よって口腔の機能が複合的に低下している疾患、と定義されています。
では、具体的なお口の機能とはどのようなものかといいますと、、、

お口の機能は、以下の大きく5つに分類されます。

咀嚼(そしゃく):食べた物を「噛む」機能。
嚥下(えんげ):食べ物や飲み物、唾液などを「飲み込む」機能。
構音(こうおん):舌や唇を使って「言葉を作る」機能。
唾液(だえき):食事や口腔内の清潔のために「唾液を分泌する」機能。
感覚(かんかく):食事や発声のために、口腔内の状態を感じて理解する機能。

これらの機能が綿密に組み合わさって「食べる」「話す」という活動につながっています。
加齢などの影響で、どれかひとつの機能がうまく動かなくなると、徐々に他の機能にも影響していくため、注意する必要があります。
以下の図は「5つの機能」と、それぞれが衰えた時に影響する口腔機能の低下を示したものです。

歯科医院で口腔機能低下症かどうかを検査する方法としては、いくつか種類があります。
代表的な検査方法を数種類紹介したいと思います。

・口腔衛生状態不良の検査

舌苔付着度 TCI(Toung Coating Index):視診で舌の汚れの範囲を検査します。

・口腔乾燥の検査

サクソンテスト:乾燥したガーゼを2分間咬み、唾液をガーゼと ともに一塊に回収する。
重量を測定し、増加 重量を唾液量とするし、2g/2分以下の場合、口腔乾燥ありと判定

・咬合力低下の検査

感圧フィルムによる咬合力の測定:特殊なフィルムを咬んでいただき、そのフィルムを機械で読み取り、咬合力を測定するもの

・咀嚼機能低下計測

グルコセンサー:特殊なグミを一定時間咬んでもらい、咀嚼機能を測定する

この他にも、口唇や舌の運動の機能をはかる検査や、嚥下機能を評価する検査など多岐にわたります。
全ての検査を実施するわけではありませんが、その中の必要とされる検査を実施し、一定の評価基準に満たない場合は口腔機能不全症と診断します。

ここで、口腔機能低下症とあわせてオーラルフレイルという言葉があります。
オーラルフレイルは、わずかなむせや食べこぼし、滑舌の 低下といった口腔機能が低下した状態を示すもので、いわゆる(キャッチフレーズ)として使用されています。

オーラルフレイルはいくつかの段階を踏んで進行していきます。
まず、口腔機能への関心が低下して、むし歯や歯周病などになり、歯が抜けたり痛みが出てきます。
すると、口腔機能が低下して、会話や食事に不具合が出るようになり、食欲が低下したり、日常の活動範囲が狭くなったりします。
噛む力や舌の筋力が衰えれば、食べる量も低下して、低栄養の状態になりますし、会話が減れば社会的に孤立していきます。
さらに機能が低下すると、咀嚼や嚥下に障害が起こり、要介護の状態になってしまうこともあるのです。

次のような自覚症状があるときには、要注意です。

1.奥歯でしっかりと噛めない
2.噛むと痛んだり不快感がある
3.食べこぼしがある
4.むせやすい
5.口が乾燥しやすい
6.滑舌が悪くなっている

1つでも当てはまったら、歯科を受診して、口腔ケアや口腔リハビリで改善しましょう。

歯科医師 福島 歩

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オンライン診療を開始いたします

皆様こんにちは。
厚生労働省より新型コロナウィルス感染拡大防止に伴う特例的な対応として医科に続き歯科においても初診からオンラインでの保険診療が開始されることになりました。
直接患者さんからお口の悩みを聞いて口腔内を診査する対面診療とは異なり、オンライン診療では、電話や情報通信機器を用いての診療、服薬指示等を行います。

不要不急の外出自粛の中、今すぐに歯科を受診するべきなのか悩まれている方がいらっしゃいましたら自己判断ではなく主治医の指示を仰ぐのがベストかと思いますのでどうぞご活用ください。

<オンライン(電話や情報通信機器を用いた)診療のしくみ>

①初診料は時限的に3割負担の方で555円。処方料や薬の代金は別途かかります。
(厚生労働省より 令和2年4月24日)

②診療の流れ(歯科医院によって異なります。)

【準備】

○スマートフォンやタブレット等の通信機器
○インターネット環境
○オンライン診療専用のアプリケーションがある場合‥
→問診票の入力(お名前・生年月日・ご住所・電話番号・メールアドレス健康状態に関する質問・今回気にされている部位の症状、経過等)
保険証の添付(個人のなりすましや虚偽の申告による処方を防止するため)を済ませておいてください。

 ↓
【予約】

 ↓
【初診】

電話、テレビ電話によるオンライン診療の場合
○問診(上記参照)直接主治医がお聞きします。
○保険証
お電話にて被保険者番号等の確認、またはファックスによる送付、テレビ電話の場合画面に提示していただきます。

 ↓
【診察】

問診内容や過去の診療データを元に電話や情報通信機器によって歯科医師がリアルタイムで診察します。
またオンライン診療は全ての疾患に対して診察しかねますのでその場合は医療機関における対面診療を推奨する場合がございます。

 ↓
【決算】

診察が終了したら決算に進みます。
診療一部負担金ついては、銀行振り込み、クレジットカード決済、その他の電子決済等の支払い方法により実施されます。

 ↓
【処方】

決算が完了し、薬局での服薬指導を希望される場合は、医療機関からご希望の薬局へと処方箋情報が送付されます。
薬局にて調剤した薬剤は書留郵便等で確実の患者さんのもとへ届いたことが確認されます。
また院内処方の場合は医療機関から直接お薬を配送させていただく場合もございます。
処方に関するお支払い方法としては代金引換の他、銀行振り込み、クレジットカード決済、その他の電子決済等がございます。
(患者さんのなりすましや虚偽の申告による処方を防止するため)

厚生労働省HP参照
〈新型コロナウィルスに係る診療報酬上の臨時的な取り扱いについて〉
https://www.mhlw.go.jp/content/000625703.pdf
〈医療機関が電話やオンラインによる診療を行う場合の手順と留意点〉
https://www.mhlw.go.jp/content/000624983.pdf

③オンライン診療のメリット
・院内感染・二次感染のリスクがない。
・受付や会計の待ち時間が短縮できる。
・自宅や外出先で診察が受けられる。
・院内処方の場合薬が自宅に届く。

④オンライン診療のデメリット
・検査や直接の身体所見がとれないので診断精度に劣る。
・診察が可能な対象疾患に限りがある。
・インターネットに不慣れな人は支援が必要である。 等

日本歯科医師会による皆様へのお願い

緊急性のある歯科診療とは、自発痛が強い、歯茎の腫れて痛い、歯が折れた、詰め物がとれて食事が出来ない、口内炎が2週間たっても治らない等を指しますが、一般の方が判断するには難しい部分もあるかと思います。
その場合にこのオンライン診療を用いて主治医に意見を仰ぐことで不必要な外出、歯科受診を控えることに繋がると考えます。
また痛みなどの自覚症状が無ければ、定期的な歯のクリーニングはコロナウィルス拡大が終息するまでは延期した方が安全だと考えます。

最後にウィルス感染に対抗する歯科の重要性をお話しします。
日々のセルフケア(歯磨き・デンタルフロスの使用・舌磨き)が歯科疾患予防のためにとても重要であることは皆さんご存じだと思います。
ウィルス感染は鼻と口から起こります。
細菌だらけの不潔な口腔内はウィルス感染を助長し、さらに体内へ侵入することで腸内細菌のバランスを崩し、免疫低下を及ぼします。
また誤嚥性肺炎(細菌が食べ物や唾液とともに誤嚥され発症する肺感染症)のリスクが高い方はウィルス性肺炎のリスクも当然高く、特に注意が必要と言われています。

今回オンライン診療についてお話しさせていただきましたが、ご自身の症状での歯科受診が不要不急なものであるかどうかを知りたいなど些細なことでも構いませんのでご相談ください。
まだまだ知られていないオンライン診療ではございますが、これを機会に皆様への認識とご理解をいただけたらと思います。

歯科医師 小松リナ

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PCR検査とは?

新型コロナウイルスが依然猛威を振るっています。
緊急事態宣言がでて1か月がたちました。
自粛疲れが出る頃とは思いますが、できるだけ早く平常の生活を送るためにも、不要不急の外出は避けましょう。

今回は連日ニュースで報道されている「PCR検査」(PCR法)について、どういったものかをご紹介しようと思います。

PCR法とは?

PCR法はPolymerase chain reactionの略語であり、特定の遺伝子を指数的に増加させることで微量の検体からウイルスなどに感染しているかどうかを調べることのできる方法です。
すべて生物の遺伝情報は、ゲノムDNAと言われる設計図の中に暗号化されて収められています。

ゲノムDNAの最少単位は4種類の塩基(A:アデニン、T:チミン、G:グアニン、C:シトシン)と呼ばれる物質で、設計図の文字に相当します。
この文字の数や並び方は、生物の種毎にだいたい決められているので、文字の並び方でどの生物の設計図なのかが分かります。
ヒトでは31億文字、大腸菌では464万文字あり、生物種によって文字の数(=ゲノムDNAの大きさ)や並び方は異なります。

PCR法は、増やしたい遺伝子のDNA配列にくっつくことができる短いDNA(プライマー)を用意し、酵素の働きと温度を上げ下げすることで、目的の遺伝子を増やす方法です。
増えたDNAを染め出す特殊な装置に入れる事で、増えた遺伝子を目で確認する事ができます。

検体の中に増やしたい遺伝子があれば増えて目で確認することができ“陽性”と判定されます。
しかし、検体の中に遺伝子がなければ増えないので、目で確認することはできず、 “陰性”と判定されます。

現在猛威を振るっている新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ですが、日本では2020年1月30日に国立感染症研究所にて分離に成功し特定の文字の配列を発見することができたようです。
これをもとにPCR検査を行うために必要な試薬(プライマー)を大量に生産し現在の検査が可能となっています。

PCR法には

RT-PCR法(reverse transcription-PCR法)
Real-time-PCR法
In situ PCR法
DNAサブトラクション法
DNAマイクロ・アレイ法
SNA解析
レポーターアッセイ
ゲルシフトアッセイ

等の種類があります。

現在使用されているPCR法は遺伝子領域を2ヵ所特異的に検出する「2-step RT-PCR法」とTaqManプローブ(特定の文字配列があると発光するマーカー)を用いた「リアルタイムPCR法」の2種類があります。

新型コロナウイルスについてはまだまだ未解明なことも多く簡易検査が難しいことから、ウイルスの検出にはPCR法に頼らなければならないのが現状です。
PCR法は精度が高く有効な手段ですが、作業が難しく時間がかかってしまうため、誰でもできるわけではない。
結果の判定は人が行わなければならないというのが欠点です。

現在専門家の先生方や治療に携わっている方々が寝る間も惜しみながら、新たな検査法や治療薬、ワクチンの開発を行っており、大変頭が下がる思いです。
一日も早く、簡単かつ正確な検査方法、確実な治療法、ワクチンが開発されることを祈ります。
私たち歯科医師も地域のPCR検査センターにおいて微力ながらお手伝いをさせていただきます。

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口腔内症状を呈する
ウィルス性疾患

4月になり新生活の季節ですが、世間では連日、新型コロナウイルス(COVID-19) に関する報道が流れており、WHOによるパンデミック(世界的な大流行)宣言もされました。

皆さまもご存じの通り、感染経路として現時点では飛沫(ひまつ)感染と接触感染の2つが考えられています。
つまり、感染者の咳やくしゃみ等に存在するウイルスを他者が口や鼻から吸い込むあるいは、感染者が咳やくしゃみを押さえた手で触れた様々な物を他者が触れて感染するという2つの感染経路です。
これらのことを踏まえた上で感染予防として、まずは、石鹸を用いた手洗いやうがい、アルコール消毒(70%)をこまめに行い、感染の拡大を抑えていきましょう。
詳しくは、厚生労働省のホームページに記載されていますのでご参照下さい。

https://www.mhlw.go.jp/stfeeisakunitsuite/bunya/kenkouiyou/dengue fever_ga00001.html

新型コロナウイルス感染に伴う症状として発熱や咳などがありますが、味覚障害や嗅覚障害といった症状もあるという報告があり、味覚異常が主訴で歯科を受診される方もいらっしゃるかと思います。
さて、このようにウイルス感染によって口腔内に症状が出る疾患がいくつかありますので、これを機にご紹介させていただきます。

①単純ヘルペスウイルス感染症
単純ヘルペスウイルスには1型(HSV-1)と2型(HSV-2)がありますが、口腔に感染するほとんどが HSV-1 です。
小児期に初感染した後、神経節に潜伏したウイルスが免疫力低下によって再発(再帰感染)するのが特徴です。
初感染と再帰感染では症状が異なり、HSV-1の初感染で発症するのがヘルペス性歯肉口内炎で、再帰感染で発症するのが口唇ヘルペスです。

・ヘルペス性歯肉口内炎
HSV-1 初感染後5日程で発症することが多く、発熱や倦怠感に始まり、歯肉や舌、口腔粘膜に水疱が多発します。
この水疱が破れ、凍傷になることで口腔粘膜全体に赤みが広がり、強い接触痛を伴う症状のため、食事や歯磨きが困難になり栄養状態の悪化や口臭がみられますが、抗ウイルス薬の服用により約2週間で口腔内は傷あとを残さずに治ります。

・口唇ヘルペス
HSV-1 の再帰感染によって唇やその周辺に水疱が生じ、かゆみやピリピリ感を伴うことがありますが、抗ウイルス薬の服用により約1週間で治ります。

②帯状疱疹
神経節に潜伏していた水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の再帰感染により特定の神経支配領域の皮膚や粘膜に水泡を生じる疾患です。
初感染では水症が発症し、再帰感染によって帯状疱疹が発症します。
顎顔面領域では三叉神経や顔面神経に生じます。
特に三叉神経に多く生じ、顔の周囲の皮膚や口腔粘膜に水疱を伴います。この水泡が破れて潰瘍を形成しますが、抗ウイルス薬の服用により3週間程で治ります。

・帯状疱疹後神経痛
帯状疱藤が治った後、患部に強い神経痛様疼痛が後遺することがあり、これを帯状疱筋後神経痛と呼びます。主にプレガバリンという薬を用いて治療します。

・Ramsay Hunt症候群
顔面神経の神経節が侵された場合、外耳周囲の水泡、顔面神経麻痺、めまいや難聴の3症状を示すものを Ramsay Hunt症候群と呼びます。抗ウイルス薬の服用などにより治療します。

③ヘルパンギーナ
コクサッキーウイルスA群(主にA4)の感染による水疱を伴う疾患で、夏に流行し子供に多い病気です。
高熱とともに明頭部に発赤や水泡がみられ、強い接触痛があるため食事困難となり栄養不良を伴います。夏にかかりやすいので小児は特に脱水に注意が必要です。
抗ウイルス薬の服用ではなく、安静や栄養、水分補給により1週間程で治ります。

④手足口病
コクサッキーウイルス A16 やエンテロウイルス 71 の感染による手や足、口の周囲に水泡を伴う疾患で、夏に流行し子供に多い病気です。
高熱とともに口腔粘膜に水泡がみられます。
この疾患もヘルパンギーナ同様に、抗ウイルス薬の服用ではなく安静にすることにより1週間程で治ります。

⑤麻疹(はしか)
麻疹ウイルスの感染により、全身の皮膚に赤い発疹を生じる疾患です。
皮疹に先立って、口腔内の頬粘膜に Koplik班と呼ばれる白斑が生じるため、麻疹の早期発見に役立ちます。
は小児科医と連携して治療していきます。

以上5つの疾患をご紹介しましたが、どれもウイルスという目では見えないものに感染することで発症する病気です。
新型コロナウイルス同様、こまめに石鹸による手洗いやうがい、アルコール消毒を行うことで感染予防につながります。

私も歯科医師として、また医療従事者の一人として感染予防をしっかりと行った上で、患者様の診療に携わって参りますのでよろしくお願い致します。

以上を臨床研修開始のご挨拶とさせていただきます。

末尾となりますが、新型コロナウイルスの早期の終息を心より祈っております。

歯科医師
瀬津昂斗

参考文献
・標準口腔外科学 第4版

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味覚の仕組み

こんにちは。歯科医師の小松です。
季節の変わり目で体調を崩しやすい
時期ではありますが、皆さまお変わりはありませんか。
メディアでは連日、新型コロナウィルスの大流行が報道されています。
手洗い、うがいなどの感染対策をしっかり行い自分の身を守りましょう。

さて、皆さまは普段どのように味を感じているのかご存知ですか?
我々は毎日の食事を通じて身体に必要不可欠である栄養素を摂取する事で生命活動を維持しています。
そして、この食事をとる際に無意識に味覚を用い、様々な味を感じ取っています。今回はその味覚の仕組みについてご説明したいと思います。

○味を感じるしくみ

ヒトの味覚の大部分は舌表面で生じます。(その他には軟口蓋 咽頭 喉頭など)
舌の表面には糸状乳頭、茸状乳頭、葉状乳頭、有郭乳頭と呼ばれる突起状の構造が4種類存在しています。

※糸状乳頭は舌全体に点在

糸状乳頭以外の乳頭には味蕾という味を受け取る受容器が存在しています。
味蕾の寿命は約10日で、成人で5000~7500個、高齢になるほど減少傾向にあります。

この味蕾を構成する細胞は50~150個。さらにこの中の一部に存在する味細胞は唾液や水に溶けた飲食物に含まれる化学物質(味)を受容し、信号として神経を伝導し、脳によって味の種類を感知できるというシステムになっています。

味細胞の中にはⅡ、Ⅲ型細胞が存在しており、Ⅱ型細胞は甘味 苦味 うま味を受容し、Ⅲ型細胞は塩味 酸味を受容します。
そしてこの苦味、酸味、塩味、甘味、うま味は5基本味と言われています。
苦味の感受性が最も強く、これはエネルギー源や栄養源となる好ましい味と腐敗物や毒物など人体に有害となる回避すべき味を識別し、食物を取捨選択する役割を果たしています。

また20世紀まで、これら基本味の感受性は舌の位置によって異なることが古くから言われてきましたがそのような証拠はなく、2000年に米国のグループにより舌全体の味蕾でそれぞれの味を感じ取っていることが明らかになりました。
このようにヒトの持つ味蕾によって化学物質(味)を受容し、電気信号として脳に伝わり、認識することで味を識別するというシステムになっています。

○近年の味覚の研究について

しかし近年では味覚に関するシステムの研究が進歩したことで機械による味の判別が可能になりました。
味を分析したのは、九州大がベンチャー企業などと産業連携でつくった味香り戦略研究所の分析機。
5基本味に渋味を加えた味の評価を新開発の味覚センサーを用いることで流れる電位差から味を数値化することに成功しました。
ある食品メーカーがこの味覚センサーを用いて自社が数多く取り揃えていたドレッシングの味を分析したところ、味の方向性が偏っていたことが判明し、新商品の開発に繋げることが出来たそうです。
その他には果物や野菜の品種改良においても参考にされているといいます。

味覚センサー(味認識装置)https://www.irie.co.jp/products/taste-ts-5000z/

近年、このような機械による味の評価が進められている中、東京大学大学院農学生命科学研究科 三坂巧准教授は解明された味覚のメカニズムを応用し、2010年 味蕾の遺伝子を腎臓由来の細胞に組み込み、甘味を感じると赤く写るように反応する甘味センサー細胞を開発しました。
これは電位差や果汁の濃度から代替的に甘味を測定する糖度計と異なり、実際に人が味を感じる仕組みを再現し、甘みの強さを2分間ほどで測れるという仕組みになっています。
つまりこの甘味センサー細胞は、ヒトが感じる甘味に近い数値を示すことができます。
人の経験と感覚に頼ってきた味覚の計測からいかに脱却するかが大きな目標と三坂准教授は話します。
この研究は産業界からも注目されているようで、将来的に臨床に活かすことが出来るようになれば、味覚センサー同様、食品開発や新たな応用領域にも役立つであろうと確信しています。

また味蕾そのものの研究も進んでいます。
これまで苦味は毒の可能性がある物質を正確に見分けるために多くの種類を感じられるようになったという説から苦味の受容体は25つ存在することが分かっています。
しかし、なぜ甘味の受容体は1つのみにも関わらず砂糖や人工甘味料などの様々な甘味物質を同じように甘いと感じられるのかについては今まで解明されていませんでした。
しかしこの仕組みについては、岡山大の山下敦子教授の研究チームが2017年に大型放射光施設スプリング8を用いたメダカの味覚センサーの詳しい構造の解明により明らかになりました。
実際、甘味やうま味をキャッチする味細胞の受容体は柔軟な形をしており、食物を構成するアミノ酸(αアミノ基やカルボキシル基等)の一部分の構造を認識することで受容することができているというものでした。
一方で体の仕組みを整えるアドレナリンやドーパミンなどのホルモンに対する受容体は厳密にできており、不用意に神経が過敏になることや、血糖値が乱高下するのを防いでいます。
甘味や旨味など生命維持に必要な味覚に関しては幅広くおいしいと感じられるように限られた遺伝子情報で生命活動を維持できるように作られた仕組みなのかもしれないと山下教授は話します。

○まとめ

味覚の仕組みについてはいかがでしたか?
ご紹介してきました通り、現在様々な分野で味覚についての研究が進んでいます。
しかし味覚の研究は他の感覚の研究に比較して非常に遅れており、視覚の研究は30年、嗅覚の研究は10年ほど進んでいます。
味覚の受容体に関して分かってきたのは2000年以降の話です。
この発見以降一気に研究が進み、味覚の仕組みが徐々に解明されてきたことで機械による味の分析が可能になりました。
視覚や聴覚と異なり、記録や再現の難しい味覚にとって大きな一歩であったと言えます。
このように味覚が主観的情報だけではなく共有できる客観的情報にも変換できるようになったことで食品産業界にて活躍するのはもちろんのこと、伝統の味、あるいは現在の食文化を後世に正確に繋げていくことも可能になっていくだろうと確信しています。

歯科医師 小松リナ
〈参考文献〉第五版 基礎歯科生理学 医歯薬出版

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水道水フロリデーション

みなさまこんにちは。寒い日が続きますが、風邪などひかずに元気にお過ごしでしょうか?
この季節、様々なウィルス感染などに警戒が必要です。
手洗いうがいを徹底的に取り入れて予防に努めていきましょう!

ところで、多くの方々が、むし歯を作らないようにする方法として、フッ素が効果的だという事は何となく今までに耳にしたことがあると思います。
フッ化物利用の方法には大きく2つに分けることができます。

1、全身応用

経口的に摂取され消化管で吸収されたフッ化物が、歯の形成期にエナメル質に取り込まれ、むし歯抵抗性の高い歯が形成されます。
同時に萌出後の歯の表面にも直接フッ化物が作用します。
水道水フロリデーション、フッ化物錠剤、フッ化物添加食塩、フッ化物添加ミルクが含まれます。

2、局所応用

萌出後の歯面に直接フッ化物を作用させる方法です。
フッ化物歯面塗布、フッ化物洗口、フッ化物配合歯磨剤が含まれます。

今回は全身応用の一つである水道水フロリデーション(水道水フッ化物濃度調整、communal water fluoridation)についてのお話しです。
むし歯を予防するために、フッ化物を利用する方法は、20世紀初めに北米で行われた変色歯の原因調査から端を発したそうです。

歯の表層にあるエナメル質に境界不明瞭の白斑・白濁・白い水平縞が現れたり、中等度になると歯面全体にわたってチョーク様に白濁する現象を歯のフッ素症(斑状歯)といいます。
さらに歯の表面に小さな凹みが加わるとその部位に外来性の色素が沈着し、褐色から黒色を呈することがあります。
しかしながら、むし歯ではないという状態です。

歯の形成期、永久歯では出生から満8歳までの間にフッ化物が高濃度の飲料水を慢性的に摂取すると歯のフッ素症(斑状歯)が発生することがあるそうです。
つまりフッ化物の濃度が高過ぎるとむし歯は抑制されるが、斑状歯になる危険性があるということが分かったのです。
フッ素は自然界に広く分布している元素です。土壌中に280ppm、海水中に1.3ppm含まれています。
地球上の全ての動・植物にも、毎日飲む水やほとんど全ての食品に微量ながら含まれています。
私たちの身体にも存在します。

天然の飲料水中のフッ化物濃度と歯のフッ素症の発現、及びむし歯罹患との関連性が解明され、飲料水中のフッ化物濃度の適正量が導き出されました。
現在世界で実施されている水道水フロリデーションでのフッ化物の至適濃度は国際的に見ると地域による差はありますが、約1ppmという極めて低い濃度です。
ppmとは「100万分の1」の単位で、例えばある物質が1ℓ中に1mg含まれていることを意味します。
使用するフッ化物は、フッ化ナトリウムやフルオロ珪酸というフッ素化合物で、ホタル石や氷晶石、リン鉱石などの自然の鉱物を原料として生産されています。
フッ化物についての水質基準では、WHO(世界保健機関)は1.5ppm以下ですが、わが国の水質基準はその約半分の0.8ppm以下となっています。
また、むし歯予防のための推奨フッ化物濃度については、WHOでは0.7~1.0ppm、米国衛生局では0.7~1.2ppmとなっていて、地域の平均気温の差による飲水量の差から、最適な飲料水中のフッ化物濃度には一定の幅をもたせてあるそうです。

水道水フロリデーションは1945年に米国・カナダの4都市で開始されました。
その後、水道水フロリデーションは、米国内はもとよりオーストラリア・ブラジル・香港・アイルランド・マレーシア・ニュージーランド・シンガポールなど多くの国々や地域に導入されるようになりました。
世界的にみると3億7000万人が水道水フロリデーションを利用していると見積もられています。

しかしながら、先進国では水道水へのフッ化物添加が行われていない国々がたくさんあります。
日本では現在のところ水道水フロリデーションは実施されておりません。
その他、ヨーロッパの国々でも水道水フロリデーションを導入していない国がほとんどです。

ドイツも水道水フロリデーションを導入していない国の一つです。
これは薬物療法にあたるからだそうです。
ドイツでは、フッ化物添加食塩や日常食品などからフッ素の摂取が可能と考えてあえて水道水にフッ化物を添加しない方法を選んだのかと思われます。

毎日の食事の内容に気を配り、口腔内の衛生状態を改善するほうが良い方法だと考えたようです。

そもそも、水道水フロリデーションとは、天然水の中に存在するフッ化物の量を適正な濃度に調整し、その飲料水を摂取することによってむし歯を予防する方法です。
ですから、もし天然のフッ化物濃度が高すぎる場合は適正濃度までフッ化物を除去して調整するという役割があります。
天然水が安全な基準値にあれば問題は無いのですが、議論は続ているようです。
アメリカは国土も広く、気候や地質も地域によって様々です。
ですから、天然水の水質にも様々な違いがあったことから、アメリカは水道水フロリデーションを推奨する国になったのだと思います。
日本でも、アメリカ軍の統治下にあった沖縄県で(1957年~1972年)水道水フロリデーションが実施されていました。

現在の日本の水道水中のフッ化物濃度は低く、むし歯を予防する効果が全く期待できる値でないことは明らかです。
もし、フッ化物の全身応用を考えるのならば食品によるフッ化物摂取を検討すべきなのでしょうか?
政治的な問題もありますので、水道水フロリデーションの実施はわが国では難しいようです。
自主的にフッ化物を摂取するなど、個人の判断に任せられています。

歯科医師
大庭美和子

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